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煙草の煙が、宙に消えていく。
湯船の中の精液みたいなのが、煙草自体から昇る煙で、茸雲のなりそこないが、僕が吐いた煙だ。 木々の小枝すら揺らすことすら出来ない力ない夜風が、煙を僕から遠くに運んでゆく。 その煙の向こうから、寅縞の猫がまるで長くて高価なマントを羽織った王のようにゆったりとゆったりと現れる。 この寅縞の王の気をひこうと手を叩いたり足踏みをしたりしてみたが、王は、下賤の者には取り合わないといった風で僕の横を通り過ぎ、近くの植え込みへと入って行った。 何をしているのか、僕は気になり暗がりの中目を凝らして王の行方を追う。 寅縞の王は、地面に顔をうずめてその辺りの匂いを嗅ぎ回っている。 ここではない、ここではない。どこへ行ったのだ。 王は、あちこちをその鼻で探す。 やっとここという場所に巡り会ったのか、王は、その両足を器用に使いながらその辺りを掘り始めた。 いや、もう王の威厳など微塵もない。そこには、狂った野良猫がいるだけだった。 ある程度掘り下げると寅縞の王はその穴の上にしゃがみ込む。ああ、王は排泄したかったのだ。その顔はまた。落ち着き放ち王の顔に戻っていた。 すべては、煙の中の物語だ。 PR |
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