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【2024/04/28 00:42 】 |
風の強い夜だった。
わあわあと木々が悲鳴をあげていた。ざあざあと雨がふるように草花がすすり泣いていた。そんな夜だった。
終電で帰宅した。
飲んだくれた帰りじゃない。溜まった仕事を片付けた。
これで明日からちょっと楽になる。そう思いながら、家路を急いで歩いた。
僕の住んでいるアパートはちょっとした郊外にある。
住宅街ではあるものの、周りは森に囲まれている。自然が豊かと言えば、そうなるかも知れないけど、田舎と言い切ってしまえばそれまで。そんな場所だった。
帰って寝れば朝が来る。ただ、ちょっと疲れていた。
早く帰りたい、そう思って家路を急いだ。
郊外だから、というわけでもないかも知れないけど、家までの道のりはちょっと暗い。
暗いから、よくものが見えない事もある。でも、そのときはなんだかはっきり見えた。道端に小学校中学年位の子供だった。髪の毛は耳までで綺麗に切りそろえ、着ている黄色いシャツも半ズボンも凄くきちんとした感じの男の子だ。
その子がこんな夜中に道端にしゃがみ込んで何かしている。
僕はちょっと大人ぶりたくなった。
こんな夜中に子供ひとりで、危ないじゃないか。ふと、言いたくなって子供のそばに近づいた。
近づいて解ったことだけど、子供の前に段ボール箱があった。
中からばたばたという音とびしゃびしゃと沢山の鳴き声がしている。
何?
子供はその段ボール箱の中に両方の腕を突っ込んでいる。突っ込んだ腕は、肩の辺りから何やら動いていて、近づいてきた僕にもまるで気がつかないようだった。
一心不乱。
なんだかそんな言葉がとても似合っている。
いきなり声をかけ驚かそうと、子供の背後に立った。でも、まるでそのことには気がつかないように、子供はその段ボール箱を覗いている。こんなに集中していたら大丈夫だと思った。
僕は、子供の驚いた顔を想像して胸が高鳴った。
さあ、声をかけよう。
ふと思った瞬間、子供の顔がこちらに向いた。
ショックだった。子供は、僕の事を全部見ていたかのように実に当たり前の顔でこっちを見た。
子供にまで裏を読まれていたのかとがっかりした。
明日の朝きっと寝覚めがよくないなと思っていたら子供は僕の脳みそにさらにのしかかった。
「おじさん、ひよこっておいしいね。」
子供はそう言うと、両手に一羽ずつのひよこを掴みだし、一羽の方を首からいきなり食いちぎったかと思うと、もう一方を僕の鼻面に差し出した。
嬉しそうに笑う口元は、血でべとべとしていた。
顎に白く貼りついたものは、内蔵だったろうか。
僕は、おじさん疲れて眠いからと家路を急いだ。
風の強い夜だった。わあわあと木々が悲鳴をあげていた。ざあざあと雨がふるように草花がすすり泣いているような、そんな夜だった。

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【2011/03/26 21:26 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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