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【2017/06/28 21:05 】 |
佐田早苗
薄暗い店の中で粉チーズと、それを入れていた白磁の入れ物が飛び散った。
僕の彼女へのイメージは今でもその破片に彩られている。
ただ、ひっくりかえされた訳じゃない。投げられたものだった。
投げたのは、佐田早苗。投げられたのは、司見次第というペンネームの漫画家だった。
誰が言い出したのか、忘年会ともクリスマス会ともつかぬ会の二次会だった。
泣き崩れる佐田早苗を当時みんなのボスだった久慈良夫が抱えた。
「どうして、こんな男に惚れちゃったんだろう。」
屑籠にゴミを丸めて捨てるように佐田早苗が呟く。
某大手チケット会社勤務の阿部奈津子が抱えられた佐田早苗の頭をドロドロに酔って撫でていた。
久慈が、
「とりあえず、ここはなんとかするからお前は帰れ。」
と、司見に言った。
司見は、なんとなく場の雰囲気を壊したことを悔いるようにその場をあとにした。
その会は、それから一時間もしないうちに解散した。
泥のように酔っていた阿部が、このあとどうなったかはまた別の機会にするとして、それから数日後、僕と佐田は一緒の電車に乗っていた。
新宿で落ち合って仕事の打ち合わせをした。
夕方から、二人して高円寺にある彼女の行きつけの居酒屋へ行く予定だった。
「ようちゃん、カノジョとかいる?」
司見の悪口を散々言ったあと、佐田の口をついて出た言葉がそれだった。
「いないよ。」
確かにいなかった。でも、その次に出てくる言葉は予想しながら期待してなかった。
夕日が車窓に当たっていた。街並みが車内に影を落とした。
「じゃあ、つき合っちゃおうよ。」
ほら来た。期待してない答え来ちゃった。
「嫌だよ。」
僕は即答する。佐田という人は正直かわいかった。かわいいなと思っていた。かっこつけたかったのだろう。
今思えば、ひとつはそういう理由があった。
実際カノジョはいなかったし、彼女は気になる人のひとりではあった。もうひとつ理由をあげれば、なんか胡散臭かった。
彼女という存在がとても胡散臭かった。
彼女は、五つも年が上でなんだか、風来坊のような生活をしていた。
海千山千を知った今ならちょっとは受け入れていたと思うが、あの頃の僕は臆病だった。
だから答えは
「嫌だよ。」
だったのだろう。
「だって、彼女いないんでしょ。つき合っちゃおうよ。」
半分笑いながら答える僕に、彼女は詰め寄る。
「いやあ、あんたみたいな人じゃ付き合えないよ。」
「そっかあ、ダメかあ。」
やがて、高円寺に電車がたどり着く。
駅へ降りると風がまだ冷たかった。
僕らは、さっきまでの電車の一件がまるでなかったかのように、その居酒屋で騒いだ。
しばらくして、彼女は一緒の仕事をやめた。
小さなイベント会社を久慈と僕は作った。
そこに彼女は賛同しなかった。
今更だけど、僕は今グレーな社会でのた打ちまわる。
あの時あの場所でOKしてたら。
今の自分はどうなっていたろう?
アナザーストーリーを考えるといいような悪いようなそんな気分になる。

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【2011/03/26 21:16 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
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