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「甘禁ですか。」
新しい宿房へ入るとサラの人間が必ずと言っていいほど訊かれる。 最初何を言いたいのかわからなかった。 甘いものが、食えないか?と訊かれていたらしい。 そういえば、ここに来てからもう何日も甘いものをたべていない。 三級以上は2ヶ月に一回集会があり、そこで甘いものが食べられるらしい。 級があがる毎にその頻度が高くなってゆき、一級は毎日食べられるのだとか。 みんなそれを楽しみにしていた。 高中さんなんかは、甘いものが載っている雑誌を眺めながら、いつも旨そうだ旨そうだとボヤく。 今は、割と痩せ型なこの人も娑婆では甘いものが好きで太っていた。 そうした人々を見ていてわかったことは、私はそれほど甘いものが好きではない。そういうことだった。 ここにいる期間の長い短いはあるかもしれないが、みんな初めから甘いものは欲しかったというのだからやはり私の場合は好きではないのだろう。 三級集会の日、私たちに配られたのは、さくら餅とコーラだった。 私は三つ並んださくら餅のうち2つを左右のふたりに渡し、コーラを半分ずつもらった。 もちろん、ここではそんなことは違反。見つかったら懲罰だ。だが、こんなに大人数で映画を見ている最中に、薄暗い中でコーラとさくら餅を交換している姿を見られる可能性なんてゼロに近い。 並んだパイプ椅子が工場毎にブロック分けされている。 そのブロックに房別に座ってゆく。 映画は半年位前にやっていたやつだった。 でも、ここにいると皆、それが新しい映画なのだ。 コーラも安いクラッシックコーラというやつで、あれは飲みたくないからと自分のコーラと両サイドのコーラの約二本分、いや二本半位のコーラが集まった。 私は炭酸が大好きなのでいただきますとおいしくコーラを頂いた。 みんな数ヶ月ぶりの炭酸に胃が痙攣をおこしたりもするらしい。 私はなんともなくするすると飲み込めた。 映画はサーフィンの映画だ。刑事と犯人がサーフィンを通じて友情を育むみたいな感じの映画だった。 話は半分に、私はまたしばらく飲めなくなるであろうコーラの味を楽しんだ。 春の風が窓から入り込んで眠たくなる。 オヤジも寝たかったら寝てもいいと言っていた。 もう誰かが眠っていた。そんな陽気の日だった。 PR |
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