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歓楽街の灯がひとつひとつ消えてゆく。
あらゆる感情や、甘美な夢やタールのような闇が煙と一緒に消えてしまうように、サウナのボイラーから漏れる水蒸気が今日を告げる朝日の上り始めた空に消えようとしている。 清掃車が街に積もった埃を洗う。道路を磨く。この街は新しい一日を始めようとしていた。 客と食事をした帰り道。 女はタクシーを捕まえようと、気づかないくらいなだらかな坂道を大通りの方へあがって行く。 大きな紙バッグを肩から下げて、多少アルコールも助けてか、ゆっくりと坂道を歩く。大きく顔を隠すサングラス、赤茶色の髪の毛、黄色いトップレス、古着なのか、その上に羽織っているデニムは、少し黄緑色にくすんでいる。 何があったのかその顔すらよく解らないが、女の姿は夏の朝靄のように清々しい。顔も、よく見えないので何ともいえないが、つややかで凛としていた。 それが、いつも彼女がそうなのか、あるいは、いつもの彼女は違うのか? そこは解らない。けれども、その朝と夜の入り混じる光を浴びた彼女の姿は、何ともいえないほど神々しかった。 だから、どうという事はない。 女は大通りにそこにつけ待ちしている車に乗り込む。それまでのわずか数分の話。どうって事のない話だ。 車は朝日の中へ向かって走り出した。 PR |
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