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  <title>慧青い愛阿の私、憂いロマン</title>
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  <description>小説ブログです。掌編小説を中心に載せています。
どうぞよろしくお願いします。</description>
  <lastBuildDate>Thu, 12 May 2011 21:11:55 GMT</lastBuildDate>
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    <title>カレハ</title>
    <description>
    <![CDATA[　弥生には最近気になる事があった。<br />
　それは、帰り道の銀杏並木の坂の下にここ数日いる同じ高校の制服男子の事だった。その男子は、名前を小田マコトという。昨日、廊下で彼を見かけた時にクラスの男子に名前だけは聞いた。<br />
　夏を遠く過ぎたせいか、彼の肌は抜けるように白い。<br />
　その小田が今日で三日連続、その坂の下にいる。前の二日は、銀杏の並木を上ったり下ったりしていた。<br />
　しかし今日は、坂の下から何かをスケッチブックに描いている。さすがに不審に思った弥生は、思い切って話しかけてみた。<br />
「小田くんだよね？　隣のクラスの&hellip;。何してるの？」<br />
　小田は弥生と直接目を合わせない。<br />
「あ、絵を&hellip;」<br />
　弥生には、その姿のどこかに小学生のような匂いが感じられた。半分しどろもどろ風な小田。弥生がスケッチブックを覗くと、銀杏並木の上に消えてしまいそうな雲という構図の絵だ。<br />
「これ、小田くんが描いたの？　うまいよね？　すごいうまい」<br />
　弥生が小田の顔を覗く。小田は、その視線を外すように道端の縁石を見る。<br />
　弥生が、小田の手から半分奪うように取ったスケッチブックのページ一面に静かな秋の世界が広がっていた。<br />
　次は、何が描いてある？　気になった弥生が紙に指をかけたその時、<br />
「ダメ！　絶対ダメ！」<br />
　小田の手が、スケッチブックを奪い返す。<br />
「え？　いいじゃん、他のもみしてよ！」<br />
　今までの静かな小田の雰囲気とはまるで違う表情がそこにあった。それは、怒りではなくむしろ困惑の表情だった。弥生は、その小田のまなざしに自分がどうすればいいのかを見失ってしまった。<br />
「もういいよ！　またね！！」<br />
　思い通りにならない気持ちをそのまま、弥生は口に出した。<br />
「あ&hellip;」<br />
　小田は、小さく肩を落とした。そんな姿も見ずに弥生は力任せにその場を後にした。静かに銀杏の葉が坂を転がり落ちた。その音が<br />
二人の間を遠ざけていった。<br />
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    <pubDate>Thu, 12 May 2011 21:12:16 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>雛</title>
    <description>
    <![CDATA[風の強い夜だった。<br />
わあわあと木々が悲鳴をあげていた。ざあざあと雨がふるように草花がすすり泣いていた。そんな夜だった。<br />
終電で帰宅した。<br />
飲んだくれた帰りじゃない。溜まった仕事を片付けた。<br />
これで明日からちょっと楽になる。そう思いながら、家路を急いで歩いた。<br />
僕の住んでいるアパートはちょっとした郊外にある。<br />
住宅街ではあるものの、周りは森に囲まれている。自然が豊かと言えば、そうなるかも知れないけど、田舎と言い切ってしまえばそれまで。そんな場所だった。<br />
帰って寝れば朝が来る。ただ、ちょっと疲れていた。<br />
早く帰りたい、そう思って家路を急いだ。<br />
郊外だから、というわけでもないかも知れないけど、家までの道のりはちょっと暗い。<br />
暗いから、よくものが見えない事もある。でも、そのときはなんだかはっきり見えた。道端に小学校中学年位の子供だった。髪の毛は耳までで綺麗に切りそろえ、着ている黄色いシャツも半ズボンも凄くきちんとした感じの男の子だ。<br />
その子がこんな夜中に道端にしゃがみ込んで何かしている。<br />
僕はちょっと大人ぶりたくなった。<br />
こんな夜中に子供ひとりで、危ないじゃないか。ふと、言いたくなって子供のそばに近づいた。<br />
近づいて解ったことだけど、子供の前に段ボール箱があった。<br />
中からばたばたという音とびしゃびしゃと沢山の鳴き声がしている。<br />
何？<br />
子供はその段ボール箱の中に両方の腕を突っ込んでいる。突っ込んだ腕は、肩の辺りから何やら動いていて、近づいてきた僕にもまるで気がつかないようだった。<br />
一心不乱。<br />
なんだかそんな言葉がとても似合っている。<br />
いきなり声をかけ驚かそうと、子供の背後に立った。でも、まるでそのことには気がつかないように、子供はその段ボール箱を覗いている。こんなに集中していたら大丈夫だと思った。<br />
僕は、子供の驚いた顔を想像して胸が高鳴った。<br />
さあ、声をかけよう。<br />
ふと思った瞬間、子供の顔がこちらに向いた。<br />
ショックだった。子供は、僕の事を全部見ていたかのように実に当たり前の顔でこっちを見た。<br />
子供にまで裏を読まれていたのかとがっかりした。<br />
明日の朝きっと寝覚めがよくないなと思っていたら子供は僕の脳みそにさらにのしかかった。<br />
「おじさん、ひよこっておいしいね。」<br />
子供はそう言うと、両手に一羽ずつのひよこを掴みだし、一羽の方を首からいきなり食いちぎったかと思うと、もう一方を僕の鼻面に差し出した。<br />
嬉しそうに笑う口元は、血でべとべとしていた。<br />
顎に白く貼りついたものは、内蔵だったろうか。<br />
僕は、おじさん疲れて眠いからと家路を急いだ。<br />
風の強い夜だった。わあわあと木々が悲鳴をあげていた。ざあざあと雨がふるように草花がすすり泣いているような、そんな夜だった。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:26:26 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>雨</title>
    <description>
    <![CDATA[雨の日は、嫌いだと言う人の気が知れないとミチは言った。<br />
雨の日に外にでるのは寒いから嫌だけど、部屋の中から窓を叩く雨を覗くのは最高の趣味だと声を大にして言いたいと、ミチはいうのだった。<br />
雨粒が窓にぶつかる。ひとつ、またひとつ。<br />
ひとつの粒が他の粒とくっついて、流れ落ちる。流れ落ちる時に小さな粒を吸収するから、その重みで加速度が増す。<br />
色々と重くならない方が、窓枠の下まで、届くのが遅いのだ。「人みたいだね。」僕が呟くと、ミチは怒ったような顔をして、僕の首にしがみつく。「わかりきった事を言うもんじゃないよ。冷めるじゃないか。」<br />
ミチは、全部知っている。僕も口を滑らせた事を幾分悔いながら、ミチの柔らかな背中を少しきつく抱く。<br />
終わりが来ることは知っていた。<br />
二人は、重すぎる。重い二人が重なり合うと、更に重みが増すから、激しく絡み合って、激しく窓枠に散るだろう。だから、ぶつかる前でよかったのかもね。<br />
ふと、リッキー・リーのポップポップが聞きたくなってCDを探した。雨には、リッキー・リーが似合うと言っていたのは、ミチだった。<br />
もうじき、雨の季節が来る。<br />
ミチの好きな季節だよ。<br />
僕は机の上で、ちょっと不満げにどうにか笑っている彼女に話しかける。<br />
今日はたまたま、春の嵐だ。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:26:03 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>雲</title>
    <description>
    <![CDATA[この市営の建物に、このファーストフード店がある理由をぼくは、知らない。<br />
そして、このファーストフード店がこの建物の十階という悪条件の中、どうやって採算を取っているのかは知らない。<br />
更に、このファーストフード店で二人のおばちゃんと一緒に高校をやっと出た位の女の子が働いている理由は、まるでわからない。<br />
でも、僕は、この場所が好きだ。<br />
ここのカウンターの席は真正面がガラス張りで、真下に街並みが、真正面に空が見える。<br />
僕は、この席で一番安いお茶を飲み、外の景色を眺める。<br />
偶に、風に流された竜が雲の間に見えることがある。<br />
鱗が、冬の薄日でさえもきらきらと輝く。巨体がうねっている。<br />
ところがはたと、自分が流されていることに気がつくのか、慌てたように尾で雲を打つと、どこか遠くの方へ泳いでいく。<br />
子供の頃、同じ光景を見ていたら、あれは、竜が居眠りをしていたのだと誰かに教えて貰った事があった。<br />
風は、今日も東から西へ流れている。今日も竜が見えそうだ。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:25:41 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>闇</title>
    <description>
    <![CDATA[ひろは朝、いつものように目が覚めた（気がした。）。<br />
ひろは朝、いつものように上体をおこして、ライトの紐をさがして、指が宙を掻いた。ところが、いつまでたっても、ライトの下にくっついてるスイッチの紐は見つからない。いつもなら、三十秒とはかからないのに、不思議なことだった。<br />
いつものように目が覚めたと思っていた。<br />
ところが、どこかが、違っている。<br />
何かが、違う。ひろはそう思った。<br />
雨戸がしまっていると、自分が何を見ているのかわからないが、でもそうではなしに、パソコンのモニターのランプもビデオのデジタルの時計も、それからわずかに雨戸の隙間から漏れる太陽の光すらも、まったく漏れてこないのだ。<br />
ひろは、立ち上がってみた。<br />
いつも立ち上がれば、机の角に手が届く、窓に手が届く。いつもの感覚を信じて、ひろは、その腕をあたりに伸ばしてみた。<br />
何もなかった。何が、起こったのかまるで見当がつかない。<br />
ためしに、前らしき方向へ歩いてみる。<br />
いつも、踏んでいる畳の感覚とまるで違う。<br />
そこには、温かみもそれから、畳の縁も何もない。足の裏は、なにか今まで感じたことのないような、ひんやりとした硬い何かだった。そして、わずか、六畳の部屋のはずが、どこまでも歩けてしまうのだった。何が起こったんだ?ひろには、よく理解できない。ただ、周りは黒一色の世界があるだけだ。<br />
ひろは、そのあたりを円を描くように回ってみた。夢かとも思って、覚めるように努力もしてみた。しかし、どれも期待はずれの現実が、ただ、彼を待っているだけだった。<br />
とりあえず、自分が夕べどういう状態で帰ってきたのか、いろいろ考えてみた。特に泥酔していたわけでもなく、何かのドラッグを試したとかそういうことでもない。考えられることは全部考えてみたが、何も思いつかない。<br />
現実は、この非現実な世界のみ。とにかく、目の前に広がっているのは、暗闇しかないのだ。<br />
狂いそうになった。それでも、何かを探してみた。ひろが、探すものは、何なのかさえも自分でわかっていない。<br />
そのことに悔しく、苛立ち、また狂いそうになる。そして、また、落ち着きを取り戻すように、何かを探し始める。けれどもこの闇の中は、空腹もなく、また、疲れもない。いらないものもないけれど、必要なものもない。何もない世界に迷い込んだと知ったとき、本当の絶望が、ひろの中に生まれた。今まで、金や家族や友人やしごとにまみれた生活は一切ないが、それは、同時に自分が何かうみだすということすらも失われたのだった。<br />
茫洋とした絶望は、はっきりとした目標物がないから、その分深い。<br />
とにかく、ひろは、歩いてみた。歩いている間、いろんなことを想像した、家族のこと、家のこと、借金、仕事、食事、排泄、恋人、すべては、何もここでは意味をなさないのか・・・。ひろは、何日も何日も歩いてみた。最初はどこから歩いてきたのか、まるでわからない。<br />
もしかしたら、自分はどこへも歩いていない気がする。<br />
とりあえず時間も空間も関係ない。何をするのもまるで意味がないのだろうか、ひろは、そんなことを考えながら、今日もとりあえず横になる。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:25:20 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>桜</title>
    <description>
    <![CDATA[桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「君は、眩しそうだね。真っ暗なのに、まるで、北国で裸眼でユキを見ているようだね。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「ゆきって、自分の名前をそこに出すのは、どうかと思うよ。それに北国って…」<br />
「ひひひ、いいじゃん。かけ言葉だよ。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「でも、ユキと僕がここでふたりで寝ころんで、桜を見ているなんて、きっと誰も解らないね。」<br />
「そうだねぇ。だってここにこんな木が生えてるなんて、誰も知らないからね。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「月あかりだけで、桜を見るのって、なかなか僕も洒落た事考えるよね。」<br />
「君の才能として、一応認めてあげる…。公園とかで、ぼんぼり吊してっていうの、私あんまり好きじゃないし…。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「それに、公園じゃ、こんなことできないし…。」<br />
「馬鹿だなあ、君は…。」<br />
「その馬鹿とつきあってるのは、ユキだよ。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「そうだね。今どんな感じ？ <br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「今とっても気持ちが、いいんだけどさ。血が、なくなるって、なんだか眠くなるみたいな、そんな感じだね。とっても気持ちいいかも…。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「そうなんだ…」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「ユキは、どう？」桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「私は、それも、あるけど、なんだかちょっと、寒いかも。あと、景色がぼんやりしてきたよ。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「ああ、そうか。じゃあ、抱き合ってとかちょっと恥ずかしいから、手をつなごうか？」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「君はホントに馬鹿だなあ。そんな事したら、よけいに恥ずかしいじゃないか。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「それじゃあ、おいで。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「うん。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
「あ、ユキ、もう冷たいね。」<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
桜の花びらが降ってくる。暗闇に花が咲く。白い。<br />
月が真上に白く上っている。風は、緩やかに草木を撫でている。]]>
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    <category>未選択</category>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:24:57 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>海</title>
    <description>
    <![CDATA[「海のかなたに捨てに行きました。」<br />
佐藤は、そういった。<br />
「海のかなたにいろんなものを捨てに行ったんです。」<br />
佐藤はテトラポットの上に立ち、僕にそう語る。<br />
風が強い。僕がかぶっているキャップは、最近の流行のもののように深く出来てはいなかったので、今にも吹き飛ばされそうになり、僕は、その上に掌を乗せてみる。<br />
冬なのに、海岸線の日は、海の太陽特有の強さで、僕らに照りつける。<br />
日差しが、少しだけ眼に痛い。<br />
「辛かったんですね。佐藤さん、とっても辛かったんですね。」<br />
僕は、風に消されないような大きな声で、佐藤に言った。佐藤は、何も答えずに、しゃがみこんだ。<br />
バタバタと僕らの背後にある県道沿いの旗がたなびいている。<br />
僕は、防波堤の欄干から、テトラポットに這い出ると、佐藤の脇に立った。佐藤は、ちょっと下に顔を向かせて、僕の視線を自分の顔に向けさせないようにした。<br />
珍しく泣いているように見えた。<br />
「なくしちゃいけないけど、失くさなくっちゃいけないものはけっこうあるんだよ。」<br />
「佐藤さん、大好きだったんだ。」<br />
佐藤が、その日、海のかなたに捨てたもののすべてを僕は知らない。でも、佐藤が捨てたものは、この海の水に溶けずに、どこかでまた佐藤がやってきて、佐藤が見つけてくれるのを待っているような気がしてならない。<br />
]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:24:23 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>旭</title>
    <description>
    <![CDATA[歓楽街の灯がひとつひとつ消えてゆく。<br />
あらゆる感情や、甘美な夢やタールのような闇が煙と一緒に消えてしまうように、サウナのボイラーから漏れる水蒸気が今日を告げる朝日の上り始めた空に消えようとしている。<br />
清掃車が街に積もった埃を洗う。道路を磨く。この街は新しい一日を始めようとしていた。<br />
客と食事をした帰り道。<br />
女はタクシーを捕まえようと、気づかないくらいなだらかな坂道を大通りの方へあがって行く。<br />
大きな紙バッグを肩から下げて、多少アルコールも助けてか、ゆっくりと坂道を歩く。大きく顔を隠すサングラス、赤茶色の髪の毛、黄色いトップレス、古着なのか、その上に羽織っているデニムは、少し黄緑色にくすんでいる。<br />
何があったのかその顔すらよく解らないが、女の姿は夏の朝靄のように清々しい。顔も、よく見えないので何ともいえないが、つややかで凛としていた。<br />
それが、いつも彼女がそうなのか、あるいは、いつもの彼女は違うのか？<br />
そこは解らない。けれども、その朝と夜の入り混じる光を浴びた彼女の姿は、何ともいえないほど神々しかった。<br />
だから、どうという事はない。<br />
女は大通りにそこにつけ待ちしている車に乗り込む。それまでのわずか数分の話。どうって事のない話だ。<br />
車は朝日の中へ向かって走り出した。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:23:53 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>煙</title>
    <description>
    <![CDATA[煙草の煙が、宙に消えていく。<br />
湯船の中の精液みたいなのが、煙草自体から昇る煙で、茸雲のなりそこないが、僕が吐いた煙だ。<br />
木々の小枝すら揺らすことすら出来ない力ない夜風が、煙を僕から遠くに運んでゆく。<br />
その煙の向こうから、寅縞の猫がまるで長くて高価なマントを羽織った王のようにゆったりとゆったりと現れる。<br />
この寅縞の王の気をひこうと手を叩いたり足踏みをしたりしてみたが、王は、下賤の者には取り合わないといった風で僕の横を通り過ぎ、近くの植え込みへと入って行った。<br />
何をしているのか、僕は気になり暗がりの中目を凝らして王の行方を追う。<br />
寅縞の王は、地面に顔をうずめてその辺りの匂いを嗅ぎ回っている。<br />
ここではない、ここではない。どこへ行ったのだ。<br />
王は、あちこちをその鼻で探す。<br />
やっとここという場所に巡り会ったのか、王は、その両足を器用に使いながらその辺りを掘り始めた。<br />
いや、もう王の威厳など微塵もない。そこには、狂った野良猫がいるだけだった。<br />
ある程度掘り下げると寅縞の王はその穴の上にしゃがみ込む。ああ、王は排泄したかったのだ。その顔はまた。落ち着き放ち王の顔に戻っていた。<br />
すべては、煙の中の物語だ。<br />
]]>
    </description>
    <category>未選択</category>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:23:31 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>君</title>
    <description>
    <![CDATA[君は、あれからどうしていますか。<br />
<br />
「あんたねえ、泥棒みたいな真似すんじゃないわよ。」<br />
引っ越しの荷物を片付けに来た僕に不動産屋の女が言います。唖然としながら、僕は言葉を失いました。<br />
どうこうしたくたって、出来るものじゃない。僕は今や実家すらないホームレスですよ。言葉は喉まででかかっていました。でも、何も言えなかった。<br />
別に切れられてるのに逆ギレしたって…って思ったからです。<br />
白熱灯のライトの下で、不動産屋と僕と僕の友達と大家の四つの影が揺れていました。でも、誰も身動きが取れなかったんです。<br />
不動産屋の奥に控えていた大家のおばあちゃんがゆっくりと重い口を開けます。<br />
「猿渡さん、あなたねえ、これ以上この老人に迷惑掛けないで頂戴よ。」<br />
まるで誰もいない大伽欄にひとりで大声を出しているようです。<br />
頭の中をわんわんとこだまする声、声、声…。<br />
僕を罵る単語の数々を聞き飽きたのか、友達が話を挟んできました。<br />
「まあ、あなた方の彼を責める気持ちも解らなくはないけど、ここを一刻も早く出ていくように指示したのは、あなた方だし、それに終わってからあいさつ行けばいいって彼言ってはいたから、なにも夜逃げみたいな事するつもりはなかったんですよ。」<br />
「そんなもの、しんじられますか。今までずーっと逃げて来たんですよ、この人。」<br />
こっちだって大変だったんだからと言いながら、僕の顔を眺めているのは、不動産屋の女でした。<br />
僕は、そんな話とはよそに君の荷物を探しました、視線が泳ぐ限りに。<br />
でも、君の荷物はもうなかったですね。<br />
「さっちゃんだって、かわいそうよ。あんたの為にみんなから疑われて、居場所どこだって沢山電話掛かってきて。あんた、あのコの気持ちを考えたことあんの。」<br />
不動産屋が怒鳴っているその声がそれまで僕の心に届かなかったのは、この話が出てこなかったからだったんですね。<br />
その声で急に元我が家の玄関に連れ戻されました。<br />
でも、怖くて君がどうしているのか、僕には聞けませんでした。<br />
その日、どうにかその場は凌いで、荷物は無事に運び出しました。<br />
しばらくして、その後君に電話をしたけど、君の番号は変わっていて繋がらなかった。<br />
君は今、どこにいますか。<br />
君は、あれからどうしていますか。]]>
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    <pubDate>Sat, 26 Mar 2011 12:23:07 GMT</pubDate>
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